株式会社 遠藤製作所

タイ進出は1989年と早い。ゴルフクラブのヘッド部分の製造は機械化が難しく、特に研磨では人手に頼る部分が多い。すでに当時、日本では何千人という人員を抱えるのが難しくなっており、生産拡大を実現するための進出だったが、同社の特徴は、その後、国内では実績がない自動車の鍛造部品の生産をタイで始め、事業分野を大きく広げたことにある。これは、現地調達を課題とするタイの日系企業から、ゴルフクラブのヘッドを鍛造で作ってきたノウハウが認められた結果だった。

現在、タイのローカルスタッフは約2,000名。日本人駐在員は約30名で、技術 指導や管理にあたっている。現地法人の役員は約３分の１がタイ人であるほか、入社20年目というスタッフもおり、技術・売上ともに順調に成長中だ。当社が組織づくりで最も気を配っているのは、能力に見合った報酬を支払うために、国内外の評価制度をほぼ同じにして、みなが納得できる制度運用を進めている点だ。

日本人のものづくりに対する意欲と労働に対する意識は素晴らしい。一方、人生全般におけるバランス感覚は、タイ人のほうがいい。この2つは時に相入れないこともあるが、うまく調和していくと、大きな推進力となる。タイは政情が安定した資本主義の国で、社会の根底には仏教の精神がある。こうした社会構造が、協業の基盤となっているという。

現在、タイは生産、日本は開発・営業に特化し、国内では新たな取り組みとして、医療機器への参入を果たしており、航空機産業への参入も予定している。ここでも、ゴルフクラブで培ってきたチタンを加工する技術が生かされている。チタンは、軽くて丈夫で熱に強いと知られているが、医療分野で注目される理由は、人体の骨や関節などとして埋め込んでも金属アレルギーを起こしにくいと言われるためだ。当社は世界トップの鍛造技術と応用力をコアに、国内外の協業によって新分野へのチャレンジを続け、未来を切り開いていく。