Vol.02

不滅の玩具・・・プラモデルと日本人

日本にとって製造業とは必要不可欠な存在。というもの製造業が日本のエネルギー資源も食糧も支えているから。あいにくエネルギー資源も食料も日本に少ない。それらを海外から輸入しなければ私たちは生活できないのだ。それらを輸入するために必要なもの、それは外貨。外貨を得る為に、日本はモノを輸出する。そして実は海外に輸出されるモノの90%以上は工業品。つまり、製造業が無ければ、日本がエネルギーや食料を手に入れることは出来なくなってしまうのだ。日本の製造業は日本人誰にとっても大事な存在。
今回の主役は、製造業の中でも重要な、プラスチック。

91.4キログラム。何の数字かというと、日本人が一人で1年間消費するプラスチックの量である。驚くべき量だ。プラスチックは現代人の生活にはかかせない物質なのである。プラスチックはあらゆる産業のあらゆる製品に、あらゆる部品に使われている。特に、おもちゃは殆どの製品がプラスチック製だ。そこで、今回はおもちゃ界の雄、『プラモデル』にスポットを当ててみることにした。日本のプラモデルといえば、大和、ゼロ戦といった戦闘機モノや鉄道モノからガンダムの模型(いわゆるガンプラ)まで、常に老若問わないファン達にこよなく愛されている。日本の伝統工芸から発達していった『模型』を前身とし、それが進化し日本に根付いた『プラモデル』。現在500億円市場とも言われる日本のプラモデルのどようなものだろうか。

日本とプラモデル

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静岡と東京都台東・葛飾界隅。共通するのは、『おもちゃ』とゆかりが深いということ。

静岡県は良質な木材の集積地で、古くから木材加工が盛んだった。木材が豊富だった上に、腕の良い木工職人が集まってきた。徳川家光による浅間神社の造営のため、幕府御用達職人が駿府(静岡)に招かれ定住。そこで漆器・蒔絵・塗下駄などの木工技術が熟成されていった。タミヤ、ハセガワ、青島といったメーカーは、そうした静岡の木材加工を源としたプラモデルメーカーである。今でも静岡ではプラモデル・模型の見本市である静岡ホビーショーが毎年開催されている。

また、東京都葛飾区・台東区は古くからおもちゃ作りが盛んだった。セルロイド製玩具は葛飾区が発祥と伝えたれている。タカラ・トミー・バンダイといった有名な玩具メーカーも、この地域から誕生した(現在タカラとトミーは合併し「株式会社タカラトミー」に)。

そもそも何故プラモが誕生したかといえば、イギリスが1930年代に敵味方車輌識別の教育用に作り出したのだ。それが後に娯楽として定着し、一般の人々が趣味として愛好するようになって言ったというわけである。

昭和初期日本にはまだプラモデルは流入してきていなかった。が、すでに戦闘機を中心とした航空機の模型が存在していた。昭和初期といえば折りしも太平洋戦争へ突き進んでいった時代。日本は軍国教育の真っ盛りである。そこで、航空思想を復旧させるための効果的な方法として、文部省は1939年(昭和14 年)、模型飛行機作りを奨励。しかしながら、戦況の悪化や連合国による対日輸出物資の統制等で、模型の動力に使用されるゴムや鋼などの入手が難しくなり、模型店の苦難を強いられたという。

そして迎えた終戦。進駐軍と共にプラモデルがやってきた。いくつかの国内模型メーカーは、この新たな舶来品に目をつけた。国産初のプラモデルを作ったのは『マルサン』というメーカーであると言われている。「潜水艦ノーチラス号」の誕生である。 1958年の事であった。その後,イマイによる「サンダーバード」シリーズのヒットにより、キャラクターモデルという分野が確立した。

日本で純国産のプラモが誕生したから20年、日本プラモ史上最大の大物が誕生した。「機動戦士ガンダム」である。アニメ放送開始当初は底まで知名度があったわけじゃなかったものの青年層のアニメファンを中心にじわじわと人気が高まり、再放送後に映画が公開されると人気は爆発した。

1980年、バンダイからガンダムのプラモデル第一号が発売されると、出荷後すぐに店頭から消えるほどの人気振りを博した。(株)バンダイ「1/144機動戦士ガンダム」1980年発売初代ガンプラは現在も発売当時の価格(税込み315円)にて販売されていおり、ガンプラの中で最も多く販売されている(©創通エージェンシー・サンライズ)。ガンプラは発売から26年間あまりの間になんと1000種類ものラインナップを展開。いまだにファンに絶大な人気を誇るガンプラは今までの出荷数は3億8千万個という。

プラモの作られ方

では少し専門的な話。プラモは具体的にどのような方法で成形されているのか?プラモキットは大まかに射出成形タイプか真空成形タイプに分かれる

射出成形(インジェクション)法

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射出成形とは、射出成形機の材料投入口(ホッパー)に粒上のプラスチックを入れるところから始まる。プラスチック粒は加熱筒(シリンダー)という熱い筒を通り抜け、液状に溶かされる。液状になったプラスチックを、加熱筒の先端ノズルから強い圧力によって金型の中に注入する。その後、金型を冷却し、中のプラスチックを固める。こうすることで、プラスチック成形品が誕生する。この作業が注射器の用法と似ているので、インジェクション(注射器)成形法とも呼ばれる。金型とは鯛焼き機が恐ろしく複雑になったものと考えればよい。射出成形の製法上の特徴として、プラスチックの細かい通り道であるランナーが生じる。溶けたプラスチック脂は、金型の上で、ランナーを伝わって流れていく。

射出成形は精密な金型を用意しなければいけないこと・射出成形の設備投資に大掛かりになることが難点だが、それにより作られたキットは、大量生産可能なうえ、パーツの精度も高い。射出成形の金型は定期的にメンテナンスを行えば40年以上ももつものもあるという。

真空成形(バキューム)法

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一方、真空成形とは、熱で柔らくした一枚のシート状のプラスチック板を、成形機にセットして、金型内に開けられている小さな穴(真空穴)から空気を吸い取る方法で、成形はほんの一瞬で終わる。

生卵が入っているプラスチックケース。または祭りの屋台でよく売られているプラスチックのお面。あれが真空成形加工を施されたプラスチックである。流線型の成形に向き、航空機模型やラジコンカー等のポリカーボネイト製のボディはほぼ真空成形でつくられる。制度と形状には限度があるが型が凹凸のどちらか一つで済むので比較的少ない型投資でできているのだ。

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産業の恋人、プラスチック

プラスチックとはまさにチョコレートのような材質であるとたとえられている。熱を加えたり冷やしたりすることで自由な形に成形することができるからである。このようなプラスチックの性質を可塑性と呼ぶ。またプラスチックは電機絶縁特性を持つため電子部品等にも好んで使われる。プラスチックがありとあらゆる産業に使われるのは、コノフレキシブルでありがたい性質を持ち、かつ軽量で比較的安価なためだ。

上で説明した二つの技術、使われているフィールドはもちろんプラモ業界だけではない。プラスチックのあるところには、必ずこれらの技術が用いられている。

射出成形が使われている製品は、自動車バンパー、自動車内装用インパネ、ハンドル、ボディ断熱材、シートクッション、携帯電話、家電製品部品、パソコン用部品といった高価な製品から、雑貨品や文房具など廉価で日常使うあらゆるものまでその範囲は限りない。

プラスチック製品の90%以上はこの射出成形でできていると言われている。ふと自分が普段使っているボールペンのプラスチック部分を見ると、小さな○ポチが控えめに付いていることに気が付く。それは、射出成形出身の証であるランナーの痕跡だ。真空成形は製品用カバー、農機具ボンネット、機械用カバー、看板、シャシー、卵容器といった、射出成形に比べると用途は限られるものの、日々必ず目にするものたちばかりである。

プラスチックが誕生して100年現在では世界で1秒間に6トンも生産されているという。プラスチックに支えたれた私たちの生活。プラスチックは私たちの趣味、娯楽からビジネスまで、さりげなくながらも必要不可欠な役割を果たしているのだ。

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