特集:微細加工

微細加工を支える「工作機械」のトップメーカー

碌々産業株式会社

碌々産業株式会社 代表取締役社長 海藤 満氏

すべてのマシンプレーヤーのために、常に一歩先の工作機械を追い続けるMEGAシリーズの生みの親。その目指す微細加工とは。

MEGAシリーズの誕生

高精度高速小径微細加工機MEGAシリーズの初代マシンは、1996年に登場。ここから日本の超精密微細加工が本格始動したと言っても過言ではないだろう。なんといっても、「微細」という言葉が製造業界で使われるようになったきっかけが、同社が加工機の名前に「微細」という文字を起用したことに始まるのだ。それ以来「微細加工とはかくあるべき」という思想に基づき、時代に先駆けて加工機を開発、発表している。

MEGAシリーズが誕生したきっかけは、3代目野田謙一社長の「好きな機械を造ってみろ」という言葉だった。それを受けて、現在は社長を務める海藤氏が「それならば、こぶし大のものを加工するものを造ってみよう」と開発チームを立ち上げた。人間は手のひらサイズのものを持ちたがる。例えば、当時はソニーのウォークマンが大流行し、年々小型化が進められていた。「いずれは微細加工が必要とされる時代が必ず来る」と海藤氏は確信したという。

驚異的な回転数を実現

碌々産業株式会社

1990年代前半の生産現場は、φ60μmの穴あけを大型マシンで少しずつDrilling(ドリリング)するような状態だった。ドリルは世界で一番細いものがφ50μmだったので、まずこぶし大のものにφ50μmの穴を高速で明けることを目標とした。マシンのX・Yストロークサイズは400mm × 300mm、目標とする回転数は40,000min(-1 回転)で、当時高速と言われるマシンが8,000~15,000min-1(回転)だったことに比べると、いかに型破りな目標だったかが想像できる。初代機MEGA-360は36,000mm(-1 回転)となったが、シャフトを超音速付近で回転させるために発生する衝撃波の問題を解消するために、ホルダーや工具も開発するなど、まさに前人未到の領域への挑戦だった。

発表後約2年のあいだほとんど売れなかったというが、MEGAIIIで40,000mm(-1 回転)の壁を突破。それと前後するように時代も追いついてきた。金型はより硬く小型化し、また、超硬工具も作られるようになった。2000年代後半には市場にスマートフォンが登場。そして医療や宇宙技術の世界でも、MEGAシリーズはなくてはならない工作機械となった。現在では、同じストロークの工作機械を30,000~60,000mm(-1 回転)までのシリーズとして揃えている。

常識を打ち破る新技術を次々と搭載

同社が極めようとしているのは、汎用性のある微細加工機だ。これには、大量生産でも1μ単位の精度を失わない、絶対的な安定性を実現することが求められる。

「微細を突き詰めると、研削加工に行きつく」と海藤氏は語る。工作機械メーカーが、より高精度・精密な加工をとしのぎを削るなか、2016年のJIMTOFで発表された P12-Cgenesisが製造業に与えたインパクトは、またしても型破りなものだった。ALL非接触を実現し、リニアモータによって刃先が宙に浮いている状態のため、ナノレベルの振動や誤差を低減できる。

またVisionシリーズは、広範囲の荒加工から小径の微細加工までを1台で行うことができ、電気自動車などで課題とされる減速機の摩擦音の抑制で必須となる鏡面加工を工作機械で実現できるというレベルに達した。もちろん超硬合金金型の加工にも適している。

こうした開発を支えるのは、創業者である野田正一氏が、工作機械とは「利用材」であり、時代の要請によって作られるものであると語った精神だ。同社の工作機械は、人と一緒に働く仲間なのだ。だからアンドロイドのように目をもち、人が呼吸をするようにゆっくりと光を放つ。自分が開発する機械をこのように愛し、人と同じように愛おしむ。だからこそ、同社の工作機械は、日本製造業の根底を支え続けているのだろう。

微細加工工業会への期待

「世界のいろいろな展示会に出展する取り組みに期待しています。企業単独で出て行くのは大変だし、何を出したらいいのかもわからない。ニッチトップなものをグローバル化していくには、世界に知ってもらえる展示会が有効ですし、これはどうやって作ったの?というところから会話が始まります。グループなら、人をそれだけ寄せ付けることもできると思います」

碌々産業株式会社

所在地

〒108-0074 東京都港区高輪4-23-5

TEL

03-3447-3421

URL

http://www.roku-roku.co.jp

エミダス会員番号

87204

 

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