【知らないと損する ベトナムビジネスの基礎知識】 第3回
試用期間に関する注意事項 その2

執筆者:斉藤雄久氏(AIC Vietnam Co.,LTD.代表)



前回に引き続き、試用期間に関して解説します。今回は労災発生時の対応、職業訓練契約、違反行為への罰則などについてです。


Ⅲ.労災発生時の対応
試用期間中の被雇用者が労災に遭った場合、雇用者が必要な対応は下記の通りです。

(1)雇用者は、試用期間中の者に対しても、正規の被雇用者と同様に、労働安全衛生に関する義務を履行する責任を負います(労働安全衛生法No.84/2015/QH13第70条2項)。

(2)労災発生の際、社会保険に加入している被雇用者は、社会保険法の規定に基づく補償を受けられます(労働法第145条1項)。試用期間中の者は、前回解説した通り社会保険の加入対象ではありません。ただし、労災が発生した場合、雇用者は試用期間中の被雇用者に対しても、応急処置・救急から安定するまでの治療費、休業する治療期間中の賃金を支払う義務があります(同法第142条1項、第144条)。


Ⅳ.職業訓練契約
現場での作業を行う者などの試用期間は営業日で6日です(労働法第27条3項)。このような短い期間中では、能力や適性が判断できないとして、試用契約の代わりに職業訓練契約を締結している雇用者もいます。その概要は以下の通りです。

(1)雇用者は職業訓練契約を結ぶことが認められています(労働法第60条1項)。ただし、職業訓練契約に関する期間、契約更新の回数など、労働法には具体的な規定がありません。さらには、地域別最低賃金を適用する規定すらありません。賃金に関する規定は、生産活動に直接従事すれば、雇用者は賃金を支払う必要があるというだけです(同法第61条2項)

(2)労働災害の発生時には、雇用者よりの補償を受ける権利があります(同法第142条1項、第144条、第145条1項)。

(3)1年以上といった長期的な職業訓練契約を締結する事例もあるようですが、このような行為は、法規上の規定がないとはいえ、大きなリスクがあります。それは、職業訓練に関する詳細な規定のないことを悪用し、雇用者が正規の雇用契約締結から逃れていると、行政当局が見なす恐れがあるからです。このような行為が発覚したある事例では、雇用者は無期限の雇用契約を締結するように、当局から指導を受けています。

(4)高度な技能を必要とする業務を除けば、訓練の期間は短期とする事が妥当です。例えば、業務経験のある被雇用者に対する試用期間は30日ですので(同法第27条2項)、同様の期間であれば問題ないと考えます。

(5)職業訓練契約の終了後に雇用契約を締結する際、雇用者はその賃金額を、地域別最低賃金よりも少なくとも7%以上高く設定する必要があります(政令No.49/2013/ND-CP第7 条3項b)。職業訓練契約の終了後、試用契約を締結するのはリスクが高いです。

Ⅴ.その他の注意事項
(1)試用期間中の賃金は、その後に正規の雇用契約を締結する際の85%とする事が認められています(労働法第28条)。

(2)法規上の規定はありませんが、試用期間終了後に採用される被雇用者は、“訓練を受けた者”と見なされます。ですので、その賃金は地域別最低賃金よりも7%高くする事が必要です(政令No.157/2018/ND-CP第5条1項b)。

Ⅵ.罰則
(1)雇用者が、採否の通知を期限日までに行わない場合、50万~100万VNDの罰金が科せられます(政令No.88/2015/ND-CP第1条5項)。

(2)試用期間が規定の期間を超える、同じ職務で2回以上の試用期間を設ける、期間中の賃金を85%未満としている場合、雇用者には200万~500万VNDの罰金が科せられます(政令No.95/2013/ND-CP第6条、政令No.88/2015/ND-CP第1条5項)。



執筆者プロフィール
斉藤雄久(さいとう・たかひさ)
東京都葛飾区出身、早稲田大学社会科学部卒。1994年12月のハノイ大学への留学以降、ベトナム在住は25年以上となる。現在AIC Vietnam Co.,LTD.のPresident。当地での豊富なビジネス経験に基づく独自の観点から、法規にも基づく実務的なアドバイス業務を実践するほか、国内外での講演も多数。


AIC Vietnam Co.,LTD.の公式サイトは、こちら

出典:『月刊エミダス ベトナム版』掲載号は、こちら
 







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